今日は、International Security, No.38-4のサマリー翻訳。

テロリストについて、が2本。核の拡散問題について、が2本。中国の擡頭が1本。
モントゴメリーだけ知ってたので、これ読もうかな、とも思ったが、前回も似たようなものだし、やめ。
39-1も購入済みなので、次はそちらのサマリー翻訳する。

リーダーを攻撃すること、的を外すこと:どうしてテロリストグループは殺害攻撃に対して生き延びるのか?
ジェナ・ジョーダン ジョージア技術大

 「リーダーを標的にすることは、テロリズムへの対抗(カウンターテロリズム)政策のカギとなる特徴である。」

「しかし、リーダーシップ殺害はいつも成功する訳ではなく、また現存する研究はこの変わりやすさを説明できない。」

「組織的弾力性の理論は、どうして殺害が、あるテロリスト低迷をもたらす一方で、あるテロリストは生存するのか、について説明する。組織的弾力性は、2つの変数に依る。官僚化と共同支援である。」

「歴史が長く、大きい組織は、官僚的な特徴を育て上げ、明確で継続するプロセスを助成し、リーダーシップへの攻撃に耐えられるよう、彼ら自身の安定性や能力を高めるのである。」
「共同支援は、テロリストグループが機能し、生存するためのリソース(資源)を供与するのに重要な役割を果たす。宗教的、分離主義グループは概して、彼らの活動する共同体から高い水準の支援、および重要なリソースへのアクセスを享受している。」

「この理論モデルをアルカイダのケースに適用することで、オサマ・ビン・ラディンの死と、それに続く他のアルカイダ幹部を標的にすることが、明白な組織的低迷をもたらさないだろうことを明らかにする。」


ウェーバーの三類型が参考になる議論かと思う。)

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不拡散の王様は裸だ;ガス拡散法、供給サイドの管理、核不拡散の未来
R・スコット・ケンプ MIT

 「技術は長い間、核兵器の拡散を制限するのに、中心的な役割を果たしてきた。しかしながら、核技術の発展や、増加する情報へのアクセス、デザインと製造のツールのシステマティックな改良は、時には、拡散への挑戦を用意にもしているはずである。ついには、途上国でさえも技術的に十分な能力を保有できるようになった。」

「基礎的な濃縮ウランのガス拡散法は、ほぼすべての国にとって、外国の手助けや輸出管理物質へのアクセスなしに可能になった。」
「もし、秘密の、また兵器の生産に固有の条件が現れたならば、技術にのみ注目している不拡散の制度は、不十分になるだろう。核の安全保障政策の根本に近い変動が現れてきているのに、変化した技術の風景は、今や、モチベーションに注目することなく、組織に立ち戻ることを余儀なくされているのだろう。」


(技術の進歩により、核兵器の拡散は容易になった。もはや制度で縛ることは難しいため、モチベーションの観点から拡散を抑制しましょう、という話。結局、技術の拡散を防ぐのは、人の移動が可能である以上、難しいのだろう。薬師寺泰三の『テクノへゲモニー』はそういう議論だった。)

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ニューデリーの長い核の旅:どのように秘密および組織の障害はインドの兵器化を遅らせたのか?
ガウラヴ・カンパニ:ランド研究所ほか

 「1980年代の終わりから1990年代の初めにかけて、多くの学者やシンクタンクのアナリスト、ジャーナリスト、政府の官僚はインドを事実上の核兵器国として見做すようになった。」
「米国の政策決定者の間のコンセンサスとしては、技術的、もしくは組織的なハードルよりも、規範がインドを、潜在的な核の能力を軍事作戦上のものにしないようにしている、というものであった。」

「しかしながら、インドは1994-1995年まで、信頼があり、安全性がある、核兵器運搬のための技術的な方法に欠けていた、という新証拠が発見された。」

「この不足は、情報の共有や関係するアクター同士の協調を防ぐ秘密のレジームへ導かれる。この秘密は、特に米国による、核の逆行という国際的な圧力を恐れたインドの政策決定者の間での、リスク回避によって取り進められたのである。」



(上の論文への応答のようになっていて、おもしろい。インドは、技術的に核兵器保有できたのに(恐らく平和利用は認められていた時代かと思う)、実際にはその能力は無かった。国際的なプレッシャーに基づく秘密保持が、インドへの情報提供を防いだ、という話。やりようによっては、うまくいくものだと感心した。)


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西太平洋における争われる卓越: 中国の擡頭と米国のパワー投射
エヴァン・ブラデン・モントゴメリー CSBA

 「対立にも関わらず、深い関与とオフショア・バランシングの提案者は、米国の軍事力に係る楽観的な、しかし非現実的な分析を共有している。特に、米国の大戦略についての議論をする際に、両者とも中国の軍事近代化の潜在的な結果を過小評価している。」

「中国のA2AD戦略と、伝統的な精密攻撃能力は、すでに米国が東アジアの地域紛争を防ぎ、長期的な同盟国を守り、共有地の自由を維持する能力を侵食している。」「脅威が現れたときに、」「単極時代では、順応してしまうよりも、パワー投射に軍事力を採用する必要が出てくるだろう。」

「この採用は、空の上や、海底に拒絶圏の中でも生存できるようなプラットホームであったり、攻撃に耐えられるような前線基地、破壊活動に強い衛星やサイバー空間のネットワークを開発することを含んでいる。」



(中国の近代化は立派だよ、パワーの投射が何かしらの形で必要になるだろう、という話。立脚点を確保することで、中国に対抗しよう、という。何とも。ありがち。)

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助けが欲しいか? 国内の反乱における外国兵士の混合された記録
クリスティン・ベック ロンドン大

 「暴力的な紛争をめぐる、主要な政策的関心事のひとつは、この紛争が、越境する反乱軍、つまり外国兵士を引き寄せ、飼育してしまうことにあるだろう。」

「この増殖する心配にも関わらず、比較的に、供する反乱軍が国内紛争に及ぼす影響はあまり知られていない。」

「現存する研究は、そのような”外部の者たち”が、反対運動に対して、兵士や武器、ノウハウ、金融リソースに対するアクセスをもたらすことで、国内の反対運動を強化するものと仮定している。」

「しかし、外国の兵士は、障害物と目標とする新たなアイデアや、どのように実行すべきなのかについて紹介することで、国内の反乱軍を弱体化もさせるのである。」「この新しい目標や戦術の紹介は、反対運動の断裂を作り出すだけでなく、地域リーダーが生きるのに必要な、人々の支援を惹きつけ、維持することを難しくする。国内反抗軍のリーダーの、越境軍の新しいアイデアを地域の状況に適用する意思や能力は、外国兵士がその地域独自の反乱を強化できるかどうか、またどうやって強化するか、を決定することが鍵となるのである。」



(反乱、紛争、における外人傭兵部隊は有用だが、一方で運動は自力でやらないと、結局まとまりが無くなるよ、という話。そうなんだけど、でもリソースを確保できる外人部隊は、彼らにとっちゃ命綱でもある訳で、そう簡単にはいかないよな)<<・・